キッチン見学
(デシャップ)
デシャップの語源は「Dish Up」の事。
皿に盛られて出来上がった料理が、ここに並び、サービスチームに手渡されます。
ヒートランプの熱があたる下には「温料理」 奥のスペースには「冷料理」が並び、ここから運ばれます。
龍吟の作業台、テーブルトップは大理石や御影石を凌ぐマーブル模様のウルトラ・セラミックストーン「Dekton/デクトン」が全ての箇所に使われています。
沢山のアイテムを手元で管理できるドロワー(引き出し)や、熱いものも瞬時に冷却させるブラストチラー&ショックフリーザーも、ここに完備。

(前菜八寸場)
こちらは主に前菜を作り上げるスペースです。
前菜にも温かいものと常温のもの、更に冷たいものがあり、
料理を供するベストな温度により、ヒートランプ で管理された2つのセクションに分かれております。
冷蔵庫以外にも、ドロワーとディッシュウォーマー、IH調理器と専用シンク、更には調理器具専用の洗浄機を完備。

(炭焼場)
龍吟の焼き物は、全て備長炭による正真正銘の「炭火焼」です。
商業施設のビル内で炭火の使用が認められるケースは、かなり不可能に近いです
が、東京ミッドタウン日比谷の設計段階で、それが可能になりました。
名物の鮎の炭火焼の為に設計した「焼台」が1台。そして大鰻の炭火焼用に設計した「焼台」が1台。
この2台で四季折々、様々な魚や肉、ジビエ、甲殻類、貝類、山菜等の炭火焼までを、全てこなしております。
龍吟が長年使用している「焼台」は、良い道具には良い理がある…。
すなわち、それが『良理道具』を提唱されている東京 浅草 河童橋の「釜浅商店」様の逸品です。
更にサラマンダー1機。燻製器1機。淡水魚水槽システム。その他、ウォーターフライヤー、IH調理器、ヒートランプ 、ローレンジを完備。

(煮方)
龍吟の味付けを一手に引き受ける重要なセクション…。
日本料理は金属鍋だけではなく、土鍋を用いる仕事も多く、その為、裸火の出るガス台が必要となります。
大口のコンロが6台、中口のコンロが7台、IH調理機が4台揃っています。
テーブルの中には、ディッシュウォーマーと、引き出しウォーマーを完備。
上からはヒートランプをズラリと設置。皿も蓋も料理も冷める隙がここには無いのです。
更に隣にはスチームコンベクションオーブンが2機。大型高温高湿庫も備えます。

(造り場)
キッチンは温かいもの、冷たいもの、火を通すもの、乾燥させるもの、生で扱うもの等、様々な料理があります。
火を全開で使い、炭火も備えたキッチンの中で、「お造り」…すなわち「刺身」を造るセクションは「環境適正温度」が他の料理とは全く異なります。
その為、他のセクションの温度の影響を受けない完全孤立のガラス張りの部屋で
PMACシステムの個別空調を導入し、生鮮魚類を一皿に仕上げる「温度と湿度の環境を整えた個室」が龍吟の『造り場』になります。
魚の下処理には大きなシンクがあると大変便利。この空間だけで3つの大型シンクが備えられており、一つはシンクそのものに冷却機能を持たせた氷温シンクが設置されております。

(造り場水槽)
造り場内には大型水槽があります。
龍吟独自の「活け〆方」に こだわりを持つ魚に関しては、龍吟スタッフが活け〆を施す為、その瞬間まで生きた状態で、こちらの水槽で泳がせておきます。

(包丁ケース)
造り場のガラスドアの向かいには、包丁立てが並びます。
造り場を任されると、自分の包丁が ここに置けるようになり、手入れ、研ぎ具合まで他のスタッフに見えるように晒して手本を示します。

(デザート場)
テーブルトップの下には、小物を整理するドロワー(引き出し)を設置。
その下にドロワー冷蔵庫と、ドロワー冷凍庫を並列。奥には焼き菓子専用オーブンと、パコジェットビーカー専用の冷凍庫を完備。
ソフトクリームマシンとパコジェットが並びます。

(器洗い場)
キッチンの料理出しサービス導線と、皿を下げる導線を意識して、その中間地点に「洗い場」がございます。
洗浄機Winterhalter2機が用途に応じて使い分けられ、手洗いでしか対応できない器は、個別シンクが2機用意されています。
下げた皿を洗い場スタッフにパスするディッシュバックのステーションがL字型で設けられ、洗い上がりを並べるバック棚も器に優しい素材で完備しています。

(洗い物シンク)
器洗い場の、すぐ右手に100cm×155cmの大きなシンクがあります。
これはキッチン側から鍋やバットやボウルを、このシンクに出せば、その反対側で洗い場スタッフが受け取れるように
シンク内でキッチンとつながっています。洗い物もパスワークで連動します。
この大きなシンクの下が殺菌灯を備えた「まな板収納庫」になります。

(キッチン内モニターTV)
キッチン内には大きなモニターがあり、スタッフで映像を視聴したり、YouTubeを見たり、伝統工芸のチャンネルをかけ流しにする事もあるのですが、
このモニターはシェフ山本のiPadと同期しており、スタッフ内で共有する情報を、シェフ山本がiPadからメモとして送信すると、
こちらのモニターに大きく映し出され、スタッフの情報共有にも役立ちます。

(パントリーの日本酒専用氷温庫&ワインセラー)
龍吟での優雅な「食時」を愉しんで頂く「銘醸酒」「銘醸ワイン」を管理しているスペースがパントリー。
日本料理のお供としての日本酒は三つの異なる温度帯で管理。メインは徹底した品質管理&貯蔵のための−5℃設定の「日本酒専用氷温庫」。
これにより日本酒ヴィンテージの可能性が広がる事に…。
更に1℃設定の冷蔵庫と常温保管。酒質によって選別し、最適な温度帯で日本が誇る「国酒」を貯蔵。全国の蔵元様から預かった大切な「国酒」を冷酒からお燗まで「最適温度帯」で、素敵な酒器と共に、お客様の元へお届けします。
それと同じく龍吟のワインセラーは、「誰もが美味いと認める味わい」をテーマとします。フランスワインの中でも皆様御存知の、絶対的に名の通った誰もが知る銘醸ワインのみの品揃えが龍吟でのワインに対する考え方…。
期待に対し間違いのない、「やっぱり、これだよな…!」と、つくづく納得する、幸せな味わいが広がるワインをソムリエがセレクトします。白、赤共に、ワインが最適な状態で、お客様の口元に届くように温度・湿度を美味しさの管理として徹底する設備が、ここに存在します。
『本物だけを少しずつ贅沢に色々と味わうペアリング』も大変好評です。
その他にも、ワイングラス専用洗浄機Winterhalter1機、チップアイスメーカー1機、生ビールサーバーも完備。

(抹茶点場)
龍吟では食後のデザートが2品出ておりますが、その後は皆様に薄茶を差し上げております。
茶碗を温める引き出しウォーマーの上に、小さな点茶場を誂え、風炉を設置。
上からはヒートランプ2機が完備。


(ウィンボック天井換気システム)
2018年、龍吟は六本木から日比谷に移転しました。
その新たなステージにおいて、キッチン設計は大きな夢であり、妥協のない理想を描きました。
最もやりたかった その一つが、この広いキッチンの全域に備えられた「ウィンボック天井換気システム」です。
厨房内の吸排気と働くスタッフの快適さは永遠のテーマ…。ここには本来あるはずのダクトフードが必要無く、騒音もゼロ。
春夏秋冬、天候や湿度にダメージを受けない、キッチンで汗をかかない、夢のシステムを実現しました。

(スタッフルーム)
キッチンの焼場セクションの裏側、ビルの巨大なガラス窓から日比谷公園と皇居を一望する明るいスペースにスタッフルームがございます。
龍吟ではゲストが食事をする客席をスタッフが使って まかないを食べる事はありません。
こちらはスタッフが くつろいで まかないを食べる為にあるスペースです。
いつでも飲み放題ドリンクバー、業務用電子レンジ、スープウォーマー、炊飯ジャー、ヒートランプ が設置され、カトラリーも充実。
ご飯もおかずもスープも、いつもホカホカ間違いなし!
テーブルにはIH調理機を3機完備しており、ここでスタッフ皆が昼の まかないで鍋を囲んで食べる事も日常なのです!
むしろ、鍋は仕込みがなく、最も早いまかない!!
あ、そうそう…。ここにもリラックスBGMがわりの大画面モニターありますねっ!



(社員用ロッカールーム)
男女別室でロッカールームが完備され、各自に一つのロッカーが割り当てられます。
更衣室も兼ねており、女性も男性もサービススタッフは、和装の衣装部屋としても使います。
各部屋にスタッフ専用トイレも完備しております。

(納品口と納品物仕分け場)
龍吟のバックヤードを抜けて納品口の扉を開いた瞬間、配達員が目にするのは目の前の60インチの大画面TV…。
そこには様々な日本文化を象徴する美しい映像が動画で流れています。業者様とも日本文化の素晴らしさを共有すべく、一日中流しています。
その奥に注文した品々を一時的に納品していただく為だけに作った荷物受けの部屋があります。
ここで納品時に品物を検品し、そこに設置してある龍吟オリジナルの保存箱、保存容器に移し替えて冷蔵庫やチャンバー室に振分けられます。
発泡スチロールやダンボールとは、ここでお別れ…。それは衛生管理を徹底するプロセス。
卸売市場など外部の床に、一度でも置かれた発泡スチロールやダンボールその物
が、メインキッチンに侵入する事は衛生上、龍吟では御法度なのです。


(護美室)
料理屋は様々な廃棄物が出るのも事実です。
市場からの発泡スチロール、梱包材、保冷剤、ダンボール。この4つが日々営業をする上での廃棄物の代表です。
それらは、このキッチンに届くまでの経緯として、どのように扱われてきたかは分かりません。
中に大切な食材が収まる箱類は、市場内では地面や床に置かれ、内部は清潔でも外部は保証が持てません…。
その為、納品された食材を納品状態の箱のまま、キッチン内部に運ぶことを、龍吟では絶対NGとしています。
中身だけキッチンに…。輸送箱はキッチン外に…。
それを分ける為のエリアを施設内に作ります。その廃棄物を衛生的に隔離するのが管理されたゴミ室です。
美しさは見た目だけでなく、様々な菌に汚染されない清潔美が我々の意識です。
あらゆる美しさがありますが、廃棄物や目に見えない汚染物を美しく管理する為の部屋を設け、「美」を「護る」ための部屋が『護美室』なのです。

(食材宝庫)
食材倉庫になります。冷蔵しない乾物や粉物、一升瓶や四合瓶の調味料、凝固剤等の収納場所であり、何より鰹節削り機が設置されている重要なスペースです。
鰹節削り機はシェフ山本が絶大な信頼を置く「エムズネットヤマキタ」の鰹節削り機を、龍吟ではタイプごとに3機設置しています。
一本釣りで水揚げした4kg〜4.5kgの厳選したカツオだけを加工した超希少な本枯れ節から更に皮と血合いを除き、カラメルのような深い黒赤に輝く、ガラスのような光沢の芯身だけを「厚削り」「糸削り」「極薄削り」に龍吟内で瞬時に削る事が可能であり、
削りたての鰹節を使って、引きたての一番出汁を秒速で実現出来るのは、ヤマキタの鰹節削り機のお陰なのです。
削った鰹節が空気に触れる時間の短さは手削りの比ではなく、究極の削りたては手作業では実現できません。
山北教浩社長 自らが足を運んでメンテナンスしてくれるのも感激します。鰹節の事、何でも教えてくれる偉大な先生です。
『龍吟では創業以来、この機械のお世話にならずに営業した日は一日もございません』
そのくらい、シェフ山本が龍吟の出汁を表現する為に必要とし、心から愛する機械です。
そして奥井海生堂様より入荷する蔵囲昆布も、こちらの棚の中で毎日出番を待っております。
その他、ここでは精米機も毎日稼動。龍吟では業者が精米した白米の状態で米を仕入れる事はなく、全て玄米の状態で入荷して管理。
その日、炊き上げる米の量だけ龍吟内で毎日精米しております。
米も削りたての表面のツヤが命。これを非日常の御馳走とします。
「鰹節」と「昆布」と「米」…。本当に毎日、想いを込めて、この作業を粛々と徹底する事でのみ、お客様に「ひけらかす事のない本物の愛」が生み出されるのです。

(器蔵)
龍吟の器を収納する為の部屋になります。
数々の作家様が創り出された器を、ここで大切に管理しております。
この写真は龍吟店内の器蔵。更に一つ階段を降りたミッドタウン日比谷内の6Fの一画、そして六本木のとあるマンションの一室という、3箇所で保管している龍吟の「御道具達」が季節毎に出番を待っております。
素晴らしい二つと無い作品に料理を盛る修行は、日本料理人として背筋の伸びる想いであります。
料理と同じように毎日の業務で器を愛する心と、その魅力が自然と身に付くようになっていきます。


このような佇まいの中で日本料理における理想の環境作りを具現化しております。
和を尊び、心を紡ぐ…。
料理が好きで料理人…。